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2005/03/19

『オペラ座の怪人』考察 (クリスティーヌ編 その2)

そして、ファントムが作ったオペラ「ドン・ファン」の幕が開けます。ここからが本当に難しい。クリスティーヌの行動と気持ちを理解したくても、何度も「なぜ?どうして?」が出てきちゃうんですよね。ドン・ファン以降のクリスティーヌの気持ちは、10人いたら10通りの考え方があるくらい、人それぞれで面白いところです。そのくらい、クリスティーヌの行動には、実は「謎」と「深み」があります。

「ドン・ファンで何かが起こる」ことはクリスティーヌは充分すぎるくらい分かっていました。自ら舞台にあがってきたファントムにすぐに気づいたクリスティーヌはこの時、ファントムの決心を知ったのかもしれません。

このまま、ファントムと道連れになるのだろうか…。

ファントムはあの時、クリスティーヌと一緒に死ぬつもりだったのかもしれません。シャンデリアを落とすのはもちろん現場を混乱させるためだったのかもしれないけど、同時に彼の住処であるオペラ座を焼き払ってしまうことに繋がるのだから。

クリスは「何となく」それを感じ取っていた。闇に潜んでいた彼が、こんなに堂々と姿を見せたのだから。

そして、彼が「音楽の天使」でも「父親」でもないことは充分過ぎるほど承知しています。ファントムはただの「人間」だということを。

この時、クリスティーヌはファントムと対等の立場だったと思います。ファントムに対して恐れはもう感じていません。もしかしたら、ファントムの覚悟をクリスが試したのではないかな~と。あの場面でクリスティーヌがファントムの仮面を引き剥がしたのが、その象徴なのかも。(ヅラまで一気にとらなくてもいいのにね。ヒドイよね)

「あなたにその勇気があるの? あなたが欲しいものは愛なの? それとも私なの? 仮面の下の表情を見せて…」

ここはいろいろな説がある場面です。少女だったクリスティーヌは純粋に「そこまで愛してくれているなら、あなたの本当の顔を見せて」という意味で仮面をひっぺがした説。

ファントムの愛の歌に我を忘れたクリスティーヌは、自分を取り戻すために仮面をひっぺがした説。など、いろいろです。このシーンのクリスの気持ちに「正解」はないと思います。ワタシの考えも数年後にはまた変わっているかもしれないですし。

自分の醜い顔にすべての責任を押し付けてきたファントムは、そんなクリスティーヌの気持ちも知らずに地下へと連れていきます。

大衆の面前で醜い顔をさらされ、赤恥をかかされたファントム。ファントムのプライドはボロボロだったでしょう。クリスティーヌに悪態をつくファントムの様子を見て、クリスはファントムの「心の歪み」を知ります。もう彼のことを哀れだとさえ思わない自分がいることにも気付きます。

音楽の天使だと、父親の魂がそばにいてくれるものだと信じていたクリスは、なぜ、こんな怪物に騙されたのかと、自分が魅入られてしまっただろうかと呪う気持ちとファントムへの憎しみでいっぱいです。この辺は歌詞から推察出来ます。

そして、クリスティーヌを救いにきたつもりが、うっかり怪人の罠に引っかかってしまったラウル、そしてファントムとクリスティーヌとの魂の闘いが始まります。

ファントムは「俺を愛していると言えば、こいつの命は助けてやろう」と偽りの愛をクリステイーヌに強要します。

ラウルは「僕のために彼女に嘘なんてつかせるな。君を助けようとしたばかりにクリスティーヌ、すまない」と真実の愛を語ります。

では、なぜクリスティーヌはファントムにキスをしたのか。(この時、クリスティーヌは自分自身で婚約指輪をはめるそうです)

ラウルのために、「嘘の愛」を誓うことを決心したからなのか。それとも、ファントムに対して(日本語字幕のごとく)「惹かれていたから」なのか。

「真実の愛」と「偽りの愛」を同時に見た瞬間、クリスの目に映ったのは真実の愛を知らずに育った悲しい小さな小さな人間の姿だけだったのではないかと思います。この瞬間、彼女の心の中からは憎しみも怒りも消えています。

寂しい夜、両親のことを思い出し泣いた夜、私のそばにはいつもあなたがいてくれた。そこにいたのは、父でもなく、ラウルでもなく、あなただったはず。あなたと出会ってからの私はずっと独りではなかった。

そして、私と一緒にいた時はあなたも独りではなかったはずでしょう? なぜ、あなたの魂はそれ程までに孤独なの? 

ここでクリスティーヌは1段階上に行っちゃった訳ですよ。ラウルよりもファントムよりも。「母性愛」だとか「人間愛」だとか、そんな陳腐な言葉じゃ片付けられないような、すべてを超越した「愛」があったんじゃないかな~と。うまく言えませんが…。あの一瞬、クリスティーヌはファントムと共に行く(生死は問わず)つもりだったように思います。

クリスティーヌに触れることで自分の魂の醜さを知ったファントムは、ここで初めてすべての呪縛から解放されます。クリスティーヌのキスで、この世の美しいものが何かを知ったファントム。そして、ファントムの変化を感じたクリスティーヌ。

やっぱり、2人の間には彼ら以外には理解出来ない、深い魂の結びつきがあったのでしょうね。ファントムはクリスティーヌを失うことで「清らなかな心」を取り戻した。そして誰にも断ち切ることの出来ない「永遠の絆」を手に入れた。

そう考えると、見てるワタシ達も救われるってもんです(笑)。

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コメント

ごめんなさい。
まだ、この映画について語ることが出来ません。
浅読みしかできないってこともあるし、言葉にするにはまだもっと心の中で熟させないとダメだし。

ただね、最後におサルのオルゴールの前のファントムが(私の号泣ポイント)憑き物が落ちたようにあどけなく見えてね。

できたら後何回か映画館で観て、DVDも繰り返し見続けたら、またいろいろと考えも変わるかもしれないな~と思っています。

投稿: linkrick | 2005/03/20 05:01

ファントム寄りで見ちゃうと気が重くなる作品かもしれませんね。
クリスとラウルのバカ~!(泣)みたいな。

私の中では「ファントム=オバカちゃん」という図式が出来上がって
しまいました。茶化して書いててお腹立ちの部分もあるかも~。
(だから、私は泣けないのかなぁ?)

映画を見て「深く考える」ってしないタチなんですよ。少しでも頭を
働かせる訓練をしようとBLOGで映画の感想を書き始めたのです。

『オペラ座』はそういう意味でも興味深い作品でした。文字にすると
どんどんキャラクターの感情に入り込んでいけます。

「正解」はないので自分の思ったように想像出来るのがいいですね。

私の方は『オペラ座』祭りも終了です。来週は『ナショナル・トレジャー』
を見に行かなくちゃ。4月は『コンスタンティン』も公開されるし♪

投稿: Michara | 2005/03/20 13:34

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